医療事故でよくある相談
医療は、内科、外科、産科、整形外科、脳神経外科、歯科、美容整形外科など、非常に幅広い分野にわたります。
実際に、相談内容は実に千差万別で、ケースバイケースでの判断が問われます。
相談に来られる方も、ご家族がお亡くなりになった方の遺族をはじめ、医療事故の被害者となったご本人、
ご本人が入院中のためご家族が代理でいらっしゃることもあります。
交通事故被害と比べる、調査の大切さ
医療事故が起きた場合、問題となる診療行為などを立証するための証拠となる診療録、看護記録、CTなど各種の検査結果が必要になりますが、通常、これらの資料は、医療機関が持っていて、患者さんの側には、ごくごく一部の資料が残っているだけです。
これらの診療に関連する記録については、極めて重要な記録であるだけに、医療機関側がカルテの改ざんや破棄などを行ってしまうケースもないわけではありません。
そして、このような改ざんなどは、患者さんの行動が呼び水になって行われることもあり得ます。
その意味で、弁護士への相談を考えられている場合は、相談前に医療機関に対して直接責任追及するような言動はされないほうが無難といえるかもしれません。
医療事故は、交通事故と同様、被害がとても深刻になってしまうことの多い事故ですが、交通事故と比べると、事故の実態が一目瞭然に把握できる事故ばかりでない(むしろ把握できないほうが多い)という相違があります。
赤信号で信号待ちをしているところを追突されて、腰を強打して足にしびれが残ったということでご相談に来られる方と、ヘルニアの手術をして足にしびれが残ったということで相談に来られる方は、被害は変わりはありません。
しかし、交通事故では追突した人の責任が明白であるし、警察による実況見分も行われて証拠も確保されやすいのに対して、医療事故の場合、かりに手術であれば、密室で起こる出来事であり、いったい手術中になにが起こったのか、
患者さんの側からはわかりません。手術の際の手技的なことに問題があったのか麻酔に問題があったのかもわかりません。そのために、まずは、カルテなどの診療記録を入手することが不可欠となります。
そして、カルテなどを入手したとしても、専門性が高いために、医学的知識がなければ、実際に起こった出来事を正しく理解することも困難です。
かりに術中ビデオを入手したとしても、標準的な手技操作や手順や骨格や血管や神経の走行についての理解がなければ、はたしてミスが認められるのか判別することは決して容易ではないはずです。
このような特殊性があるために、医療事故において、交通事故のように、いきなり裁判や示談交渉でお引き受けするということはせず、まずは医療事故の調査という形で依頼をお引き受けすることにさせていただいております。
弁護士に依頼するときのポイント
医療事故は、調査の段階から、示談交渉、場合によっては裁判という通常の事件に比べると比較的長期間を要するのが一般的な種類の事件ということができます。そのため、受任したとしても、長期にわたる共同作業を行うためには、弁護士と依頼される方との相性が大事になってきます。
もちろん、依頼者と弁護士の信頼関係は一朝一夕にできるものではありません。だからこそ、相性を直感で判断すべきときもあるでしょう。
対応事例
依頼者さまと医療機関側の交渉がこう着状態になり、前に進まない
はじめて相談に来られる段階で、すでにご自身で医療機関と話し合いをしているが、こう着状態になってしまっているという方も多いものです。
そもそも診療の経過を把握するために必要なカルテなどの資料自体、患者さんの手許になく、診療経過や客観的な検査結果などを踏まえて問題点を把握するための素材がそろっていないことが普通です。
仮に、カルテなどを入手されていたとしても、医師と患者側とでは、当然のことながら、専門知識に大きな差があるので、患者さんの側で専門知識を踏まえて問題点を指摘するということ自体、とても大変なことです。
その力量差ゆえに、本来問題のある診療行為について問題がないように煙に巻くような説明をすることも不可能なことではないのは事実でしょう。
このような場合でも、弁護士が入って、調査を行い、資料を獲得して専門家の意見を聴取して、医療機関に対して責任を問うべき事案であった場合には、示談交渉などの段階に入っていくことで、膠着(こうちゃく)していた解決への道筋を進めていくことができるようになります。
医療事故被害者の方へのメッセージ
医療事故で後遺症が残ってしまうケースや、お亡くなりになるケースは、
人の一生の中で取り返しのつかない、とてつもなく深刻なことです。
本来、起こる必要のなかった事故であるとすれば、受け入れ難いことですし、
自分と同じような事故による被害に他の人も苦しんでほしくないという気持ちは
当然のものです。
一人で抱え込んで悶々と日々を過ごす状態に陥られている方には、
そこから抜け出す一歩を踏み出すお手伝いができればと思います。
おひとりであれこれと思い悩むよりも、相談するだけで、
疑問が解消して楽になることは多いものです。
自分の問題は弁護士に相談するようなことではないのではないかというような心配など無用です。お気軽に相談ください。
ご依頼までの流れ
1.初回相談
先に述べましたように、医療事故は、被害に遭われた方がご相談に来られる段階では、はたして医療機関の責任が問われる事案であるかどうかの判断が困難な場合が少なくありません。
そのため、調査という作業を行い、診療録などを入手し、診療経過を整理し、医学文献や類似裁判例を揃えて、法的な問題点を分析し、必要があれば、相手方医療機関に対して説明を求め、当該診療科の専門家に意見を聴取するという過程を踏んでいく必要があります。
相談の予約の取り方
調査活動は①資料の入手、②専門知識の獲得、③法的責任についての判断、の3つの側面に分けることができます。
③は目的、①は素材、②は道具という感じです。
外国語の本の書評を書く(③)ために、原書(①)を入手して、辞書(②)を揃えて読解作業を進めるような作業といえるかもしれません。
①資料の入手
医師の診療録(いわゆるカルテ)、看護記録、レントゲンやCT写真、血液検査などの記録、レセプトなどを相手方の医療機関や相手方の前にかかっていた医療機関や後にかかった医療機関から入手します。任意の開示手続によることもあれば、必要によって裁判所の証拠保全という手続を利用することもあります。また、カルテの入手後に、不明な点などが認められた場合に、相手方医療機関に対して説明(文書や口頭で)を受けることもあります。
②専門知識の獲得
今ではドイツ語でカルテが書かれているということはまずありませんが、カルテ自体、英語の専門用語や日本語の専門用語、臨床現場で用いられる略語が用いられていますし、その事案の疾患や手術に対する専門知識なしには、「はいどうぞ」と渡されて簡単に一読了解できるものではありません。
専門知識は、医学文献や類似の裁判例を検索して入手することと、その分野の専門医で協力を得られる医師(「協力医」といいます)を探して事案を見ていただいて意見を聞かせてもらうという方法で獲得することになります。
③法的責任についての判断
このような調査のプロセスを進めることで、診療行為についての問題点をより精緻に検討して、法的な責任を問うべき事案かどうかを判断する段階に至ります。この判断は、依頼される方と弁護士が一緒に行うものですが、調査を進めて専門家の意見を聴取して、医療機関の責任を問うべき事案ではない、あるいは問題のある診療行為であるのは確かであるが、立証面で大きなハードルがある、あるいは、責任を問うべき事案である、との結論にたどり着いた段階で、調査は終了となります。
調査にかかる期間は、早い場合は6カ月以内のこともあれば、長い場合には1年以上かかる場合もあります。調査の費用は、弁護士費用は調査開始時に発生する330,000円のみです(調査終了時に別途報酬金が発生することはありません)。弁護士費用以外に、協力医への謝礼金やカルテのコピー費用などの経費が発生します。経費は事案ごとに変動するので、あらかじめいくらとご説明することはできませんが、概ね5万円から5万円くらいの間のことが多いといえます。
なお、経費については、弁護士が相談なく経費のかかる調査方法を進めて、あとになって多額の経費の請求がくるということはなく、事前にこのような調査方法で費用がこのくらいかかりますが、進めてよいでしょうかとお伺いしてゴーサインをいただいた方法でしか進めませんので、経費をどのくらいかけるかについてはご自分でコントロールできるというふうに捉えておいていただければ大丈夫です。
実際の相談から依頼まで
調査の結果、相手方の責任を問うべきとの結論に至った場合、通常、いきなり裁判というケースは多くはなく、示談交渉に入ることが多いといえます。
直接の示談交渉よりも、裁判所の調停や弁護士会の紛争解決センターのあっせん・仲裁手続という話し合いを取り持ってもらう手続で解決を目指したほうがよい場合もありますし、事案によっては裁判を起こした方がよい場合もあります。諸々の考慮要素を踏まえ、もっとも適切なアプローチは何かを考えて、案件ごとに慎重に見極めてアドバイスして、手続を選択していただくようにしています。
2.調査
示談交渉や裁判など、問題解決のための手順を進めていきます。結果が出るまでお待たせというのではなく、相手方から反論が来たら、それを踏まえてご一緒に対応を検討するなど、その都度プロセスをご報告して、ご意向を踏まえたやり取りを進めていきます。
実際の相談から依頼まで
調査の結果、相手方の責任を問うべきとの結論に至った場合、通常、いきなり裁判というケースは多くはなく、示談交渉に入ることが多いといえます。
直接の示談交渉よりも、裁判所の調停や弁護士会の紛争解決センターのあっせん・仲裁手続という話し合いを取り持ってもらう手続で解決を目指したほうがよい場合もありますし、事案によっては裁判を起こした方がよい場合もあります。
諸々の考慮要素を踏まえ、もっとも適切なアプローチは何かを考えて、案件ごとに慎重に見極めてアドバイスして、手続を選択していただくようにしています。
相談の予約の取り方
調査活動は①資料の入手、②専門知識の獲得、③法的責任についての判断の3つの側面に分けることができます。
③は目的、①は素材、②は道具という感じです。外国語の本の書評を書く(③)ために、原書(①)を入手して、辞書(②)を揃えて読解作業を進めるような作業といえるかもしれません。
事故直後には、担当医が自らの非を認めていた場合でも、保険会社の意向で、示談に応じないという対応になってしまうこともあります。
それだけに、示談交渉の段階から、法的責任を基礎付ける言い分(主張)とそれを裏付ける資料(証拠)をしっかりと準備して相手方にこちらの言い分を理解してもらう努力が不可欠になります。示談がまとまる場合、単に金銭的な賠償のみでなく、医療機関や医師による謝罪について定めたり、示談書の条項の中に、今後の再発防止努力義務を盛り込むようなこともあります。
弁護士との委任契約は、手続きごとに費用を決めて行うことになり、調査から交渉に移行する場合には、別途交渉での委任契約を締結します。
医療事故の場合、交通事故などと比較してかかる時間及び労力がきわめて多大なため、通常の民事事件よりも、着手金及び報酬金については若干金額及び割合を増した内容で定めさせていただくことが多いといえます。
事件が完結するまでに大切にしていること
依頼者さまにとって最善の結果となるよう、全力で案件に取り組んでいます。常に依頼者さまのニーズに応えられる関係作りに努めています。
そのために大切なことは、医療事故の調査結果などを可能な限りわかりやすくお伝えすることに務め、
依頼者の方と認識にずれがないよう、情報共有を心掛けています。